2008年05月27日

ぐるぐるまわるすべり台

くわっぱ!

おひさしぶりです。オオカミです。

研究の発表がありまして、それに向けて頑張ったらそれっぽいのが出たりなんだりで、忙しかったと思わせつつ、さり気にニ、三冊程本を買ってちゃっかり読破していました。


で、今回ご紹介するのは


ぐるぐるまわるすべり台

です。

中村航です。

もう一度言います。

中村航です。伊坂幸太郎ではありません。

以前 伊坂目当てで買った短編アンソロジーI love youで知った作家さんです。

まぁ上のリンクを踏んでもらえば分かりますが、当時、彼の作品について、こう感想を書いています。

この人もなんか、伊坂と同じ香りがします。
なんというか、その・・・

恋愛要素をとってつけたような、といいますか・・・


因みに、オオカミは一番この話が好きです。(キッパリ)



えー、伊坂と同じ香りは恋愛どうこう以前に、文体そのものであった、という事が今回はっきりました。


もうちょっと細かく言うと、人物ですかね。
会話の感じとかが、伊坂っぽいです。

ただ話の流れとかはちょっと伊坂とは違いますかね。伊坂は構成と会話を楽しむ作家だと思っていますが、
それに対して中村は雰囲気と会話を楽しむ感じ。

「ぐるぐるまわるすべり台」には
表題作・「ぐるぐるまわるすべり台」と
そのスピンオフ作品「月に吠える」とが収録されています。

前者はその雰囲気を、後者は会話を楽しめる作品となっております。

では、軽くあらすじをば。


『ぐるぐるまわるすべり台』

僕は大学を辞めた。

アナタハ ナニヲ キメマスカ

そう自分に問いかけ、とりあえず僕は、塾講師を続ける事とバンドを組むことを決めた。
ちょっと気難しい不登校児・ヨシモクとの息抜きの様な個別授業。
『ヨシモク』のハンドルネームで募集したバンド。
思い出される大学の授業。
黄金らせん。
それは中心に対して常に同じ角度で突き進むらせん。
それは内側に無限の自己相似性をもつらせん。
それは外側に無限の自己増殖性を持つらせん。
自分と同じく大学をドロップアウトしたヴォーカル希望の男・中浜と会った時に僕は・・・



物語の話やその流れはなんかとっても文系的な割に、その背骨にあるのがガチの数学と言うのが面白い。

物語の序盤に老教授の授業で黄金比の長方形(長方形を正方形と長方形にわけると、その分けた長方形が元と同じ比になる長方形)から黄金らせん(等角らせん)が出来て、その数式なんかまで出てくる。
ちょっと脱線すると因みに老教授の「曲線上の任意の点と、極限中心を結ぶ直線が曲線と常に一定の角度で交わるため、これは等角らせんと呼ばれます」
の一言のせいで、オオカミは読み終えた後、一人もくもくと計算し続けました。

因みに小説中では

r=μ^θ   (μ≒1.36)

と書いてありますが、こいつは無限に広がる方でしたね。
そんで持って・・・教授の一言からはこのμの値は出てきませんでした。
オオカミの計算によると
r=e^(-θ/tanφ)  (φは等角らせんの等角にした角度)

でした。φ=90°にすると分母が無限大になるのでθによらず角度一定、つまり正円になるのでなんかあってそうな気がします。確かエクセル君で計算するとφ=107°近くがμの値に近くなるけど、どうやって値を出すのかまではちっとめんどくさくてやってません。黄金比の長方形書いて、そっから極限中心を座標計算してやってゴリゴリやるしか思いつかなかったのです。エレガントな計算方法を誰か教えてください。
以上脱線終り。


大学の数学が難しすぎてドロップアウトした中浜の話なんかは、
「やべぇ懐かしい」って思えるくらいに詳しく語ってくれます。
そういや『自然数と有理数の濃度が等しい』ってどうやって証明するんだっけかな。

とまぁ、ガチ大学レベルの数学です。恐らく中浜君が落としたのはうちの大学でも三大ハマリ授業に指定されている「数学概論T」です、ええ。

で、そういう数学が分かってると何となくこの作品のテーマである自己相似性と自己増殖性もなーんか分かった気になる。
でも伊坂の小説みたいにすぱっと解決って訳じゃないからガチ理系の人にはもやーっとするかもしれない。

なんかこう書くとすごく読み辛い小説のように思えるけど実は真逆。
不登校児ヨシモクとの屋上部屋での授業のシーンやバンドメンバーの自己紹介等はイメージがしやすく、柔らかい雰囲気でとっても好きです。

因みに笑顔の擬音が『にゅいーん』って言うのはもっと評価されてもいいとオオカミは思います。


『月に吠える』は『ぐるぐる回るすべり台』からのスピンオフでバンドメンバーのうち、あまり語られる事がなかったギタリストの村木哲郎とドラマーの千葉の馴れ初めを描いた作品です。

超カッコええ!

って感じの作品です。I LOVE YOUに収録されていた『突き抜けろ』
に似ています。セリフがいい。

気に入ったやり取りをご紹介。

「何かを思い立ったときには、基本に立ち返る」
「基本?」
「仕事はきっちりとする。女子はきっちりと笑わせる」
「バカはバカにする。肉は食える時に食う」
「バトミントンはやらない。卓球はやる」
「まだまだ、俺たち、これからだよな?」
「ああ。俺は今、風を感じてるよ」


こういうやり取りがすんなり出来るっていけてるよね、うん。

とりあえずアレだ、伊坂ファンならまず気に入るんじゃなかろうか。
短いしサクッと読めるのでかなりお薦め。是非。

posted by オオカミ at 02:13| Comment(5) | TrackBack(1) | 小説・エッセイ・コミック | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
お久しぶりです。
俺も好きです、コレ。
文章の力の抜き加減が絶妙なのだと思います。そう思うのです(何だこの文体)。
ちなみに、『リレキショ』『夏休み』『ぐるぐるまわるすべり台』で「始まりの3部作」らしいから、おヒマなら読んでみるといいよ。
Posted by aizawa at 2008年05月27日 12:18
今時は数学概論Tって言わないらしいぜ。
古い時代の人よ。
Posted by spica at 2008年05月27日 18:56
>aizawa
おひさー。やっぱりそうだよね。伊坂好きにはたまらぬ逸品ですよね。にゅいーん。

始まり三部作かぁ。文庫で、しかも中古ででてないかなぁ。

にしても「絶対最強恋の歌」に木戸さんが出てるか気になってます。

>spica
あー概論Aになったんだっけ。
通年ではきついから前後期に分けたという・・・
大学でもゆとりの波が押し寄せてるのでしょうか。
Posted by オオカミ at 2008年05月27日 23:02
先日は、ありがとうございました。
こちらにもトラックバックさせていただきました。
トラックバックお待ちしていますね。
Posted by 藍色 at 2009年06月24日 11:41
>藍色さん
コメント&トラックバックありがとうございます。
中村航、いいですよねー。

千葉&村木のバンドコンビも結構好きなんで、どっかで出てこないかなぁ、なんて思ってます。
Posted by オオカミ at 2009年06月28日 20:41
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ぐるぐるまわるすべり台 中村航
Excerpt: 塾講師の傍ら、僕は教え子ヨシモクの名を騙ってバンドを募集した。 ボーカルの中浜に自らの分身を見た瞬間、僕の中で物語が始まった。 動...
Weblog: 粋な提案
Tracked: 2009-06-24 11:12

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